ホーム 一覧 実績の紹介 施設診断から多分野合議(MDD)診断への推移をコードダイアグラムで可視化

施設診断から多分野合議(MDD)診断への推移をコードダイアグラムで可視化

この事例では、複雑な呼吸器疾患の診断プロセスにおける、初期診断から多分野合議(MDD: Multi-Disciplinary Discussion)による最終診断への移行を可視化したものです。特に診断の精度と患者ケアの最適化が求められる医療現場において、複数の専門家による議論がいかに診断の確定に貢献するかを示します。

Dr.データサイエンスは、提供された診断データの「流れ」を、直感的かつ情報密度の高いコードダイアグラムを用いて図示し、診断プロセスの実態とMDDの価値を明確に提示しました。

分析背景・目的

お客様は、呼吸器内科において、特定の呼吸器疾患に対する初期の「施設診断」(単一診療科や医師による診断)が、その後の「多分野合議(MDD)診断」(複数の専門家による合同診断)によってどのように変化するのか、その実態を把握したいと考えていました。

これは、診断プロセスのボトルネックや改善点を特定し、最終的な診断精度を向上させることで、患者さんへのより適切かつ迅速な治療介入を実現することを目的としており、この分析を通じて、施設診断とMDD診断の間で診断の一致度がどの程度であるか、施設診断からMDD診断へと移行する際に特に診断が変更されやすい呼吸器疾患のカテゴリは何か、そして多分野合議(MDD)が初期診断の曖昧さや不確実性をどのように解消しているかを明らかにすることが求められました。

データと変数

本事例の分析に用いられたデータは、一定期間における呼吸器疾患患者の診断記録です。

    • 施設診断:患者が最初に医療機関内で受けた診断カテゴリ(例: 特定の呼吸器疾患A, 呼吸器疾患B, 診断不明など)。コードダイアグラムの片側のノード群に対応します。
    • MDD診断:施設診断の後、呼吸器内科医、放射線科医、病理医など複数の専門家による多分野合議を経て確定された最終診断カテゴリ。コードダイアグラムのもう一方のノード群に対応します。

分析手法

本事例では、初期診断から多分野合議(MDD)診断への移行パターンを視覚的に捉えるため、コードダイアグラム(Chord Diagram)を主要な分析手法として採用しました。

  1. コードダイアグラム
    • 診断カテゴリ間の関係性や「流れ」を円形のグラフで表現します。
    • 円周上に配置された各カテゴリは「ノード」として表示され、カテゴリ間の繋がりは「帯(コード)」の太さで示されます。
    (図表.コードダイアグラムの例)
  2. コードダイアグラムの目的
    • 診断の推移の可視化:施設診断の各カテゴリが、MDD診断のどのカテゴリに移行したかを一目で把握できるよう設計しました。
    • 一致度と不一致パターンの明確化:各カテゴリ内で診断が一致した場合はノード内で帯が循環する(または同色で繋がる)ように表現し、診断が変更された場合は異なるノードへと帯が繋がるようにしました。帯の太さは、そのパターンに該当する症例数や頻度を表します。
    • MDDの役割の示唆:特に初期診断で不明瞭であったケースや、MDDによって診断が明確化・変更されたケースの量的な関係性を視覚的に提示することで、多分野合議の介入が診断プロセスに与える影響を示唆しました。

主な結果の概要と臨床的考察

コードダイアグラムによる分析の結果、呼吸器疾患の診断プロセスにおける重要なパターンが明らかになりました。多くのケースにおいて、初期の施設診断とMDD診断は一致していることが視覚的に確認され、これは標準的な診断プロセスが機能していることを示唆しています。しかし、特定の施設診断カテゴリからMDDによって複数の異なる診断カテゴリへと症例が移行する「診断のずれ」のパターンも明確に示されました。

例えば、初期には一つの疾患として診断されていたものが、MDDを経て別の、あるいはより詳細な疾患として再分類されるケースや、初期段階では診断が不明確であった症例が、MDDの介入によって特定の疾患カテゴリ(例:希少肺疾患や複合的な呼吸器疾患)へと確定される重要な流れも視覚化されました。これは、多分野合議(MDD)が、初期診断の不確かさを解消し、特に複雑な症例や鑑別診断が難しい症例において、より正確かつ確定的な診断に不可欠な役割を果たしていることを強く示唆します。

これらの結果は、どの初期診断パスにおいて診断のずれが生じやすいか、MDDが特に有効な疾患群は何か、そして初期診断における課題点を特定するための具体的な示唆を医療現場に提供するものです。

Dr.データサイエンスの貢献

本事例において、Dr.データサイエンスは、医療機関の診断プロセスにおける重要な課題に対し、高度な可視化技術とデータ分析の専門性を通じて貢献しました。大量の診断データから、施設診断からMDD診断への複雑な「流れ」と「関係性」を、コードダイアグラムという直感的かつ情報密度の高いグラフで表現しました。

これにより、診断の一致度、診断のずれのパターン、そしてMDDによる診断確定の貢献度合いを、専門家が一目で把握できるようになりました。特に、数値や表では捉えにくい診断フローの「量的な関係」と「質的な変化」を視覚的に示すことで、お客様は診断プロセスのボトルネックや改善の機会を効果的に特定することができました。

Dr.データサイエンスは、単にデータを分析するだけでなく、その結果を医療現場の意思決定に役立つ形で「見える化」することで、呼吸器疾患の診断精度向上と患者ケアの最適化に資する貴重な洞察を提供しました。

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